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「おおかみこどもの雨と雪」見てきた話(ネタバレ無し)

細田守監督の映画「おおかみこどもの雨と雪」を見てきた。二回見た。思う所を書く。

母親の物語

この映画の筋は、作中では名前が示されない「おおかみおとこ」と二人の子供を設けた母親、「花」が二人の子供である姉の「雪」と弟の「雨」を育てて行き、だんだんと子供たちが精神的に自立していくさまを描いた映画。「おおかみこども」である雪と雨は、自分たちが狼だということを隠して生活して行かなければならない。映画は「おおかみおとこ」との出会いの始まりから描写され、それから夫婦愛、出産、死別、育児という風に進んでいく。

インタビューなどを見ているとわかるのが、テーマは子育てだと明言している。また、劇中でもこれは母親の物語であると明言されている。主人公は子供たちではなく母親の花である。

花は「おおかみこども」である子供たちのことが世間にバレないように育児をすることを選択し、その中で母親として大変に苦労していく。子供たちを外に出せない都会での生活でみるみるうちに憔悴していき、人がいない田舎へと移住する。やっと子供たちを外で遊ばせることができるようになったが移り住んだ田舎でまたも様々な苦労をしていくが最終的には田舎の人々と心を通わせて助けてもらう。

物語は最終的に子供たちの社会との関わりや精神的な自立に焦点を当てていく。一区切りのついた結論があって物語は終わる。

美しい自然描写

物語の前半では、花が住む都会のアパートが物語の舞台である。中盤に差し掛かると、花は子供たちのために人がいない田舎の廃屋のような一軒家へと移住する。

主人公の花が畑仕事するときは畑の若苗や実った作物が、田舎の人々が話をするときは山に中腹作られたその段々畑が、という風にエピソードの中ではその美しい自然が描写されなあらキャラクターが動き話を進めていく。

草深い田舎での古びた家、真夏の抜けるような青い空、風に揺れる草木、滝、青々とした緑に縁取られた山の峰、風に揺れる湖畔、青い空との対比が美しい冬の真っ白な雪山など、美しい自然風景が数多く描写される。映画の中では物語は12年という長いスパンを持ち、その中での季節と風景を見せる自然描写は様々でかつ美しい。

エピソードへの共感

この物語の筋は12年という長いスパンを進行していく。物語は12年間の一部ずつを切り取ったようなエピソードがいくつも連なる形で成立している。

それらのエピソードは、こどもたちが「おおかみこども」であるという部分が関わってくるだが、「おおかみこども」というのは物語内の単なる一つのギミックに過ぎない。実際には物語のなかのエピソード全ては一般化された母親の体験の描写であり、子供が成長する際の思い出の描写である。「おおかみこども」を子に持たない普通の親であり普通の子供が体験するようなこと描写している。

「おおかみこども」という要素はこれらのエピソードの中の主題ではなく、それをダシにして描写されている子育てや母親の愛こそが主題になっている。それによってエピソードの多くは誰もが共感できるような普遍的なものになっている。

人を選ぶかも

一度見て、自分はかなり楽しめたがこれはすこし人を選ぶかもしれないと思った。富野由悠季監督がこの映画に以下の様な「異例の大絶賛」をしたという記事が上がっていた。

新しい時代を作ったと言っていい。革新を目指していると言ってもいいだろう。が、作者であり監督は、そこまで意識していたかどうか。手法を追求していったらこうなったのかも知れない。

どうであれ、本作の前では、もはや過去の映画などは、ただ時代にあわせた手法をなぞっているだけのものに見えてしまうだろう。

(中略)

このような作品に出会えたことは、同じ作り手として幸せである。

アニメの可能性を開拓してくれたのだから、本作に関係した監督以下のスタッフに敬意を表する。

http://mantan-web.jp/2012/07/20/20120720dog00m200050000c.html

とまで言われているが、実際に見に行った人の感想をtwitterなどで検索してみると、やはり「自分には合わなかった」という感想もある。

というのもこの映画の非日常的な要素は、あくまで子供達の父親がおおかみおとこであるというところのみだからだ。それ以外はひたすらに自然な筋が続くだけあり、物語にはかっこいいヒーローもいなければ悪役もいないし「となりのトトロ」のように主人公を助けれくれる不思議な存在であるところのトトロもいない。こどもたちの父親がおおかみおとこであるという一点以外は、何もかも自然に筋が進んでいく。また、映画のクライマックスの主題は人によって見方の違うやや単純ではないものとなっている。

この映画のそのあたりがすこし人を選ぶ要素なのかもしれない。少なくとも人によって様々な見方になるはずだ。dankogaiも以下のように書いている。

作品の印象というのは、作品そのもの以上に鑑賞者の立ち位置によって変わる。これはどんな作品にも通じる一般論でもあるが、本作は特に見え方が変わるのではないか。まだ子どもだった頃に見ておきたかった。その頃と今とどう見え方が変わるのかを見たかった。我が娘達が親離れを果たしたら、もう一度見てみる事にしよう。別の作品になっているはずだ。作品ではなく、私が変わることによって…

http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51813431.html

終わりに

自分が見た感想としては、すごく良かった。一度目見たときは途中で泣いてしまった。その次の日にもう一度同じ映画館に足を運んでじっくり見た。そして小説本やオフィシャルブックを購入した。